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藤岡研究室

  • 岩手大学理工学部理工学科 知能情報コース
  • 指導教員 准教授 藤岡豊太



【研究室の概要】

  • 藤岡研究室では、主に弾性体(固体、流体)の振動に着目し、その振動を活用した物体の検査や性能評価に関連する研究を行っています。具体的には、構造物(特に大型構造物)の内部を高精度・簡便に検査するための非破壊検査法に関する研究や、多様な環境下におけるスピーカやアンプなどの音響機器の高精度な性能評価法に関する研究などに取り組んでいます。研究分野としては、応用音響ということで音響・デジタル信号処理関連になります。



【主な研究内容】

1.構造物の非破壊検査法に関する研究

1.1 非破壊検査

  • 非破壊検査とは、文字通り構造物などの物体を壊すことなく内部や表面の破損・傷や劣化状態を検査する、または表面上では確認できない厚さなどを調べる技術です。この技術は、単に内部・表面を検査するだけでなく、私たちが普段利用している建物、橋梁、トンネルなどの公共インフラや、鉄道、航空機などの交通インフラなどの安全性の維持・管理に重要で不可欠な技術となっています。

1.2 非破壊試験と非破壊検査

  • 「非破壊試験」と「非破壊検査」は、壊すことなく内部や表面の破損などを調べるという意味では同じ技術を指しますが以下の違いがあります。

「非破壊試験」

  • 物体の内部や表面に生じた破損・傷などの有無や大きさなどを調べる方法

「非破壊検査」

  • 試験の結果から、一定の基準に従ってその物体の状態を判定するプロセス・手法

1.3 研究室で取り組んでいる非破壊検査法 ~大型構造物を対象とした非破壊検査法~

  • 本研究室では、コンクリート構造物など大型の構造物の深い位置に発生する破損の有無や大きさを正確に検査するための手法に関する研究を行っています。具体的には、構造物のより深い場所まで届くであろう低周波振動を内部に伝搬させ、内部の破損からの反射波を表面に設置したセンサで受信し、様々なデジタル信号処理技術や適応手法を用いて破損の位置や大きさを視覚的に捉えることができる検査法の研究を行っています。

(A)提案非破壊検査法の原理

  • 本研究の基本的な原理は、下図のようにコンクリート構造物の表面に複数の加速度センサを設置して表面をハンマで打撃し、打撃によって生じた衝撃弾性波のうちの破損箇所で反射しセンサに到達した信号成分を用いて破損箇所の位置と大きさを推定するという考え方です。
  • 本研究では、大型構造物において表面から深い位置に発生する破損を推定することが目的なので、より深い位置まで到達する低周波域の信号を用いる手段としてハンマ打撃による衝撃弾性波を採用しています。
  • コンクリートなどの固体を伝搬する衝撃弾性波は、空気のような流体を伝搬する音などの信号とは異なり、縦波、横波、また表面波などの様々な信号成分が生ずるため、その中から破損箇所からの反射波のみをどのように正確に捉えることができるかが本研究において重要な部分であり、それを実現するために様々なことに取り組んでいます。

(B)波動伝搬シミュレーション

  • 検査精度を向上させるためには、実際に衝撃弾性波がどのように構造物を伝搬していくのかを知ることが重要ですが、センサ信号からだけではその挙動を把握することは非常に困難です。
  • そこで本研究では、FDTD法と呼ばれる差分法の公式の一つを用いた波動伝搬シミュレーションの活用手法に関する研究にも取り組んでいます。
  • 例えば、本研究で検査対象の一つとしている防波堤のケーソンでの波動伝搬の様子をシミュレーションしたものが以下になります。

2.音響機器の性能評価法に関する研究

2.1 音響機器の性能指標

  • スピーカーやアンプなどの音響機器では、その性能を評価するための主な指標には以下があります。

「周波数特性」

  • 入力した音に含まれる様々な周波数成分を、どのくらい正確に再生・増幅できるか。
  • 人間が聴くことのできる周波数の範囲(可聴域)は一般に20Hz~20kHzと言われているので、人間が聴くというところでは、この範囲をどれだけ変動を小さくフラットに再現できるかが一つ重要なところになります。

「ひずみ率」

  • 入力信号がどれだけひずむのか。
  • スピーカーやアンプなどへ入力した信号が音や増幅信号として出力されるとき、そのスピーカーやアンプなどの電気的・機械的影響(機器の非線形性)などにより、入力信号には含まれていないはずの周波数成分が含まれてしまうことがあります(これがひずみ成分)。
  • このひずみ成分は不要な成分ということになりますが、ひずみ率は、入力信号成分に対するひずみ成分の割合を示すものになり、ひずみ成分には様々なものがあります。

SN比

  • 元の信号に対して含まれる雑音の割合
  • SN比の数値が大きいほど雑音が少ないことを意味します。

ダイナミックレンジ

  • 再生可能な音量の範囲

感度

  • スピーカーであれば「1Wの信号を入力したときに1m離れた位置でどれだけの音量の音が聞こえるか」を表し、マイクロホンであれば「どれだけ小さい音を電気信号に変換できるか」を表します。

遅延

  • 入力から出力までの時間遅れ

その他

  • スピーカーやマイクロホンなどの性能を示す項目として「指向性」「インピーダンス」「出力」などもあります。

2.2 研究室で取り組んでいる音響機器の性能測定法 ~新たなスピーカーのひずみ率測定法~

(A) スピーカーの性能測定

  • 人間は耳の鼓膜が空気の振動を捉える(鼓膜を振動させる)ことでそれを音として認識し、スピーカーは入力された電気信号を空気の振動に変換するものなので、スピーカーにとって最も重要なことは「入力信号をできるだけ忠実に空気振動へ変換できること」になります。
  • スピーカーにおいて重要な性能指標として周波数特性、感度、ひずみ率などがありますが、入力信号には含まれていないはずの周波数成分が含まれてしまうという点で、ひずみは重要な指標です。特にスピーカーにとって最も基本的なひずみに高調波ひずみがあります。

(B) 高調波ひずみ

  • 高調波ひずみとは、例えばある周波数の正弦波信号を入力したときに、出力信号にその周波数の整数倍の成分が発生する現象です。
  • 下図はスピーカーに1kHzの正弦波信号を入力したときの出力音の周波数スペクトル(どの周波数成分がどのくらい含まれているかを表す)ですが、高調波ひずみがある場合、図のように1kHzのピーク以外に2kHz, 3kHz, 4kHz, 5kHz にもピークが見られます。これらのピークが高調波ひずみ成分になり、これらはスピーカーの機械的特性などによって発生します。

(C) 適応フィルタを用いたスピーカーの高調波ひずみ率測定法

  • 高調波ひずみ率は、上図のように周波数スペクトルから求め、周波数スペクトルはフーリエ変換(FFTなど)を用いるのが一般的です。しかし、実環境下では上図のように周波数スペクトルには高調波ひずみ成分以外の外部からの雑音成分も含まれるため、正確な高調波ひずみ率の測定が困難になります。
  • そのため、静的・正確な高調波ひずみ率を測定する際には無響室を用いますが、現実の使用環境ではスピーカーは無響室とは異なる状態で設置されるため、その設置状態によっては無響室とは異なる高調波ひずみ成分が発生する場合があります。

  • そこで本研究室では、「適応フィルタ」を用いて測定したい周波数成分のみを取り出してから測定することにより、外部雑音に頑健で且つ低コストで測定可能な高調波ひずみ率測定法の研究を行っています。